ラベンダーが咲き誇る庭を作りたい。そう思ったことはないでしょうか。
ラベンダーを地植えしたら、勝手にどんどん増えて行って将来的には夢のラベンダー畑になる。
そんなことを思った人もいると思います。
結論から言いますと地植えしたからといって、ラベンダーが勝手に増えることはありません。
ここでは、ラベンダーが自然に増えにくい理由と増やし方を徹底解説いたします。
ラベンダーが自然に増えにくい理由と増やし方
ラベンダーが自然に増えにくい理由は主に2つ、「種から発芽して育つのが難しい点」と、「株には寿命があり、数年で老化してしまう」という理由があります。
以下で詳細をご説明いたします。
種まきからの発芽と定着の難しさ
ラベンダーも花を咲かせた後には種をつけますが、その種子が自然に地面に落ちて発芽し、さらに苗として育って定着するまでには、非常に多くのハードルがあります。
まず、ラベンダーの種子は発芽率があまり高くなく、さらに発芽に適した温度や湿度、土壌環境が整う必要があります。
日本の気候、特に夏の高温多湿や冬の乾燥・霜など、一年を通して安定してラベンダーの生育に適した環境が自然に続くことは稀です。
発芽したとしても、幼い苗は乾燥や過湿、病害虫に弱く、他の植物との競合にも敗れやすいため、大きく育つ前に枯れてしまうことがほとんどです。
株の寿命と「更新」の必要性
ラベンダーは多年草ですが、実は株そのものの寿命は比較的短く、数年で株が老化し、木質化が進んで花付きが悪くなったり、最悪の場合は枯れてしまったりすることがあります。
特に日本の高温多湿な環境では、株が弱りやすく、寿命が縮まる傾向にあります。
そのため、庭に植えっぱなしにしておくと、新しい株が自然に増えるどころか、既存の株が衰えていく可能性が高いのです。
ラベンダーを長年にわたって楽しむためには、定期的に「挿し木」などで株を更新していくことが非常に重要になります。
この「更新」をしない限り、自然に株が増えることはまずありません。
ラベンダーを増やす主な方法
ラベンダーを確実に、そして計画的に増やしていくには、いくつかの方法があります。
それぞれに特徴があり、成功率や手間が異なりますが、ご自身の目的や環境に合わせて選ぶことが大切です。
主な方法は以下の三つです。
挿し木(挿し芽)
ラベンダーを増やす方法の中で、最も一般的で成功率が高いとされているのが「挿し木(さしき)」です。
「挿し芽(さしめ)」とも呼ばれます。
これは、親株から健康な若い茎(挿し穂)を切り取り、土や水に挿して根を出させて新しい株として育てる方法です。
親株と同じ性質を持つクローンが増やせるため、気に入った品種を確実に増やしたい場合に最適です。
適期に行い、適切な管理をすれば比較的簡単に発根するため、初心者の方にもおすすめできます。
株分け
株分けは、大きく育ったラベンダーの株を、根がついた状態でいくつかに分割して増やす方法です。
主に「コモンラベンダー」や「デンタータラベンダー」など、株元から複数の茎が密生して株立ちになるタイプのラベンダーに適しています。
株が古くなり、中心部分が木質化して花付きが悪くなってきた株を若返らせる目的で行われることもあります。
ただし、株に大きな負担がかかるため、株が十分に成熟していること、そして株分けに適した時期を選ぶことが重要です。
フレンチラベンダーなど、株がまとまりにくい品種には不向きな場合があります。
種まき
ラベンダーを種から増やす方法です。
他の方法と異なり、親株とは異なる性質を持つ新しい品種が生まれる可能性があるという魅力がありますが、最も時間と手間がかかり、成功率も低い方法とされています。
ラベンダーの種子は発芽に特殊な条件(低温処理など)が必要な場合があり、発芽してもその後の生育管理が難しく、開花までに長い期間を要します。
また、園芸店で販売されているハイブリッド品種の種子をまいても、親と同じ花が咲かないことが多いため、特定の品種を増やしたい場合には向いていません。
主に、一から栽培を楽しみたい方や、新しいラベンダーの可能性を追求したい方向けの方法と言えるでしょう。
ラベンダーの増やし方「挿し木」を徹底解説
ラベンダーを確実に、そして効率的に増やすための最も一般的な方法が「挿し木」です。
ここでは、挿し木を成功させるための「最適な時期と準備」について詳しく解説します。
挿し木に最適な時期と準備
ラベンダーの挿し木を成功させるためには、適切な時期を選び、必要な道具や資材を事前に準備することが非常に重要です。
挿し木の適期はいつ?(春・秋の選び方)
ラベンダーの挿し木に最適な時期は、主に春と秋の二回です。
春の挿し木(4月下旬〜6月頃)
この時期は、ラベンダーが休眠期を終えて新しい芽を出し始め、生長が活発になる直前または初期にあたります。
気温が安定し始め、湿度も適度にあるため、挿し穂が発根しやすい環境が整っています。
この時期に挿し木をすることで、夏までにしっかりと根を張らせ、その後の成長を促すことができます。
ただし、梅雨入り後の高温多湿はカビの発生を招きやすいため、注意が必要です。
秋の挿し木(9月下旬〜10月頃)
夏の厳しい暑さが和らぎ、ラベンダーの生育が再び活発になる時期です。
冬に向けて根を張らせるのに十分な期間があり、春の挿し木と同様に成功率が高いとされています。
ただし、寒くなる前に十分に根が張るよう、早めに作業を終えることが大切です。
特に寒冷地では、冬越しを考慮して屋内での管理も視野に入れると良いでしょう。
どちらの時期を選ぶかは、お住まいの地域の気候や、増やしたいラベンダーの品種によっても多少異なりますが、共通して言えるのは、猛暑や厳冬期を避け、生育が活発で比較的安定した気候の時期を選ぶことが成功の鍵となります。
挿し木に必要な道具と資材
挿し木を始める前に、以下の道具と資材を準備しておきましょう。
これらを揃えておくことで、スムーズに作業を進め、成功率を高めることができます。
- 清潔なハサミまたはカッター
挿し穂を切る際に使用します。
切れ味が悪いと茎の組織を潰してしまい、発根を妨げたり病気の原因になったりするため、常に清潔でよく切れるものを用意しましょう。
使用前にはアルコールなどで消毒すると、さらに安心です。
- 挿し木用土
赤玉土の小粒単用、鹿沼土単用、またはこれらを主体とした挿し木専用の用土を使用します。肥料分を含まず、清潔で水はけと通気性に優れていることが重要です。
一般的な培養土は肥料分が含まれているため、挿し木には向きません。
- 育苗箱または鉢
挿し木用の用土を入れる容器です。
底に穴が開いていて、余分な水がしっかり排出されるものを選びましょう。
深さはあまり必要ありませんが、挿し穂が倒れない程度の安定感があるものが良いです。
- ジョウロ
水やり用です。水はけが良い土を使うため、水が勢いよく出ないタイプのものが、挿し穂を倒さずに優しく水を与えるのに適しています。
- 発根促進剤(任意)
市販されている粉末や液体の発根促進剤を使用すると、発根率を高め、発根までの期間を短縮できる場合があります。特に初めて挿し木をする方や、確実に成功させたい場合に有効です。
- ビニール袋または透明な容器(ドーム)
挿し穂が乾燥しないように、湿度を保つために使用します。
育苗箱や鉢全体を覆えるサイズのものを用意しましょう。
- 新聞紙やトレイ
作業中に土が散らばるのを防いだり、道具を置いたりするためにあると便利です。
挿し木の具体的な手順
ラベンダーの挿し木を成功させるには、適切な準備だけでなく、実際に挿し穂を採取し、土に挿し付けるまでの具体的な手順を正確に行うことが重要です。
健康な挿し穂の選び方と採取方法
挿し木の成功は、良い挿し穂を選ぶことから始まります。
1. 挿し穂の選び方
- 健全な枝を選ぶ
病気や害虫の被害がなく、生命力のある元気な枝を選びましょう。
花が咲いている枝や、蕾がたくさんついている枝は、養分が花に集中しているため避け、花が咲き終わった後の枝や、新しい茎で充実しているものを選びます。
- 適度な硬さの枝を選ぶ
緑色の柔らかすぎる新芽は腐りやすく、反対に完全に木質化した古い枝は発根しにくい傾向があります。今年伸びた枝で、先端は少し柔らかくても、中央部から下にかけて程よくしっかりしている(半木質化している)部分が最適です。
- 長さ
10~15cm程度の長さが目安です。
2. 挿し穂の採取方法
- 選んだ枝を、清潔でよく切れるハサミやカッターで、節のすぐ下(茎の分かれ目の少し下)を斜めに切り取ります。斜めに切ることで、吸水面積が広がり、発根しやすくなります。
- 早朝や曇りの日など、植物の水分が満ちている時間帯に採取すると、挿し穂が傷みにくく、成功率が高まります。
- 採取したら、すぐに次の「水揚げ」の工程に移れるよう準備しておきましょう。
挿し穂の下準備(水揚げ・葉の処理)
採取した挿し穂を土に挿す前に、発根しやすい状態に整えるための重要な下準備です。
水揚げ
切り取った挿し穂は、すぐに清潔な水を入れた容器に挿します。
これは、切り口から空気が入るのを防ぎ、挿し穂全体に水分を行き渡らせる「水揚げ」という作業です。
水に浸す時間は30分~1時間程度が目安ですが、茎がシャキッとするまでしっかり行いましょう。
葉の処理
水揚げが終わったら、挿し穂の下準備として葉の処理を行います。
挿し穂を挿し木用土に挿し込む際に土に埋まる部分の葉は全て取り除きます。
土中の葉は腐敗の原因となり、病気を引き起こす可能性があるためです。
また、挿し穂の上部についている葉も、先端の3~4枚程度を残して取り除きます。
これは、葉からの水分の蒸散を抑え、発根に必要なエネルギーを茎に集中させるためです。
大きな葉は半分に切っても良いでしょう。
挿し床への挿し付け方
下準備が整った挿し穂を、いよいよ挿し木用土に挿し付けます。
挿し床の準備
用意した育苗箱や鉢に、挿し木用土を入れ、軽く押さえて平らにならします。
用土全体にたっぷりと水を与え、土を湿らせておきます。この時、底穴から水が流れ出るまでしっかりと与え、余分な水は排出させます。
挿し付け
挿し穂の切り口を、必要であれば発根促進剤の粉末を軽くまぶし、用土に挿し込みます。
発根促進剤を使用する場合は、製品の指示に従ってください。
挿し穂が倒れないように、深さ3~5cm程度を目安に挿します。
挿し穂同士の間隔は、葉が触れ合わない程度に確保し、風通しを良く保ちましょう。
挿し穂を挿したら、周囲の土を軽く押さえ、挿し穂がぐらつかないように固定します。
水やり
挿し付けが完了したら、再度たっぷりと水を与えます。
これは、挿し穂と土の間に隙間をなくし、密着させることで、根の成長を促すためです。
挿し木を成功させるための管理とコツ
挿し穂を準備し、挿し床に挿し付けたら、いよいよ発根を促すための管理が始まります。
ここでの適切なケアが、挿し木の成功を左右する重要なポイントになります。
発根までの水やりと湿度管理
挿し穂が発根するまでの期間は、乾燥させないことが非常に重要です。
しかし、同時に過湿も根腐れの原因となるため、適切な水やりと湿度管理が求められます。
水やり
挿し木をした後は、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。
底穴から水が流れ出るまで与え、用土全体が湿るようにします。
ただし、常に土が湿っている状態は根腐れを招くため、土の表面が乾くのを確認してから次の水やりを行います。
特に夏場は乾燥しやすいため、こまめなチェックが必要です。
湿度管理
挿し穂はまだ根がないため、葉からの水分の蒸散が続くと乾燥して枯れてしまいます。
これを防ぐために、挿し木をした鉢全体を透明なビニール袋で覆ったり、専用の育苗ドームを使用したりして、高湿度を保つと良いでしょう。
時々袋を開けて新鮮な空気を入れ替えることで、カビの発生を防ぐことができます。
日当たりと置き場所の注意点
発根を促すためには、日当たりと置き場所も重要な要素です。
日当たり
挿し木中のラベンダーは、直射日光が当たると葉が焼けて乾燥しやすくなります。
発根までは、明るい日陰や半日陰の場所を選びましょう。
具体的には、午前中の柔らかい日差しが当たる場所や、レースのカーテン越しの光が当たる場所が理想的です。
置き場所
風通しが良く、比較的温度変化の少ない場所を選びます。
急激な温度変化は挿し穂にストレスを与える可能性があります。
また、雨が直接当たらない場所が望ましいです。
屋根のあるベランダや、明るい室内などが適しています。
発根促進剤の活用
発根促進剤は、挿し木の成功率を高め、発根までの期間を短縮するための有効なツールです。
使用方法
市販されている発根促進剤には、粉末タイプや液体タイプがあります。
粉末タイプは、挿し穂の切り口を湿らせてから直接まぶして使用し、液体タイプは、所定の濃度に希釈した液に切り口を浸してから挿し付けます。
発根後の鉢上げと定植
挿し穂が発根したら、次のステップとして鉢上げを行い、その後、最終的に地植えや大きめの鉢に定植します。
発根の確認
挿し穂を軽く引っ張ってみて、抵抗を感じるようになったら根が出始めているサインです。
また、新しい芽が伸びてきたり、葉の色が鮮やかになったりするのも発根の目安となります。
焦って抜いて確認せず、じっくりと待ちましょう。
鉢上げ(ポット上げ)
発根が確認できたら、挿し穂を新しい鉢(2〜3号程度の育苗ポット)に鉢上げします。
この時、根を傷つけないように優しく扱います。
用土は、通気性と水はけの良い培養土(元肥入りでも可)を使用し、鉢上げ後は、直射日光を避け、半日陰で管理し、新しい環境に慣らさせましょう。
定植
鉢上げした苗が十分に成長し、根が鉢いっぱいに回るようになったら、いよいよ地植えや大きめの鉢に定植します。
定植の時期は、ラベンダーの生育に適した春(4月下旬〜5月)か秋(9月下旬〜10月)を選びます。
定植後は、たっぷりと水を与え、根がしっかりと張るまで定期的に水やりを行いましょう。
ラベンダーを地植えで育てる基本知識
ラベンダーを地植えで大きく健康に育てるためには、その植物がどのような環境を好むのかを理解し、それに合わせた栽培環境を整えることが非常に重要になります。
ラベンダーが好む栽培環境
ラベンダーは地中海沿岸が原産であるため、その地の気候に合った環境を好みます。
日本の気候とは異なる点も多いため、特に「日当たりと風通し」、そして「土壌」の条件を整えることが成功の鍵となります。
日当たりと風通しの重要性
ラベンダーは、とにかく日当たりと風通しが良い場所を好みます。
日当たり
ラベンダーは、一日のうち最低でも半日以上、できれば終日よく日が当たる場所で育てるのが理想的です。
十分な日照がないと、茎がひょろひょろと徒長し、花付きが悪くなるだけでなく、株全体が弱って病気にかかりやすくなります。
特に香りを重視する品種では、日照が香りの濃さに影響することもあります。
風通し
地植えの場合、株と株の間が密になりすぎたり、周囲に風を遮るものがあったりすると、湿気がこもりやすくなります。
ラベンダーは高温多湿を非常に嫌うため、風通しが悪いと蒸れてしまい、灰色カビ病などの病気が発生したり、根腐れを起こしたりする原因となります。
庭に地植えする際は、周囲の建物や他の植物との距離を考慮し、常に新鮮な空気が循環する場所を選ぶことが重要です。
特に日本の梅雨時期や夏の高温多湿期には、この風通しの良さが枯れるかどうかの分かれ目になることも少なくありません。
ラベンダー栽培に適した土壌(弱アルカリ性・水はけ)
ラベンダーの生育には、土壌の性質が非常に大きく影響します。
特に「水はけ」と「pH(酸度)」は、ラベンダー栽培において最も注意すべき点です。
水はけの良さ
ラベンダーは乾燥した環境を好む植物であり、ジメジメとした過湿な状態を嫌います。
水はけが悪い土壌では、根が常に水分に浸かった状態になり、酸素不足による根腐れを起こしやすくなります。
地植えにする場合は、植え付ける場所の土質を確認し、粘土質で水はけが悪いようであれば、植え付け前に腐葉土やパーライト、砂などを混ぜ込んで土壌改良を行い、水はけを良くすることが不可欠です。
場合によっては、高畝にするなどの工夫も有効です。
弱アルカリ性(〜中性)の土壌
多くの植物は弱酸性の土壌を好みますが、ラベンダーは比較的弱アルカリ性から中性(pH6.5〜7.5程度)の土壌を好みます。
日本の土壌は一般的に酸性に傾いていることが多いため、そのままではラベンダーに適さない場合があります。
土壌酸度計でpHを測り、もし酸性度が高いようであれば、植え付けの数週間前に苦土石灰(くどせっかい)や消石灰(しょうせっかい)などを混ぜ込んで中和する必要があります。
これらの石灰資材は、土壌改良と同時にマグネシウムやカルシウムといった必要な栄養素も補給してくれます。
地植えの準備と植え付け方
ラベンダーを健康に地植えで育てるためには、植え付け前の準備が非常に重要です。
特に、場所選びと土壌の調整は、その後の生育に大きく影響します。
植え付け場所の選定
ラベンダーの地植えにおいて最も重要なのが、適切な場所を選ぶことです。
ラベンダーの性質を理解し、次の点を考慮して最適な場所を選びましょう。
日当たり
ラベンダーは一日中よく日が当たる場所を好みます。
最低でも半日以上は直射日光が当たる場所を選びましょう。
日が当たらないと花付きが悪くなるだけでなく、株が弱りやすくなります。
風通し
湿気を嫌うラベンダーにとって、風通しの良さは非常に重要です。
建物や塀、他の植物で風が遮られない、開けた場所を選びましょう。
風通しが悪いと蒸れてしまい、病気の原因になります。
水はけ
ラベンダーは過湿を嫌うため、水はけの良い場所が必須です。
水がたまりやすい低地や、雨後に水たまりができるような場所は避けるべきです。
傾斜がある場所や、砂利混じりの土壌であれば理想的です。
適切な土壌改良の進め方
日本の一般的な土壌は、ラベンダーが好む弱アルカリ性で水はけの良い環境とは異なることが多いため、植え付け前の土壌改良が不可欠です。
1. 土壌のpH(酸度)測定
まず、植え付ける場所の土壌酸度計でpHを測りましょう。
ラベンダーはpH6.5~7.5程度の弱アルカリ性から中性の土壌を好みます。
日本の土壌は酸性に傾いていることが多いため、pHが低い場合は調整が必要です。
2. 水はけの改善
粘土質で水はけが悪い土壌の場合は、庭土の2〜3割程度の腐葉土、堆肥などの有機質を深く(30〜40cm程度)混ぜ込みます。
これにより土壌の団粒構造が促進され、通気性と水はけが向上します。
さらに、パーライトや軽石、粗めの川砂などを混ぜ込むことで、より物理的に水はけを改善することができます。
特に排水性が悪い場合は、高畝(たかうね)にして植え付けるのも有効な方法です。
3. pHの調整
土壌が酸性の場合は、苦土石灰(くどせっかい)や消石灰(しょうせっかい)を混ぜ込んでpHを調整します。
パッケージに記載された規定量を守り、植え付けの少なくとも2週間前には土に混ぜ込んでおくと、土壌に成分がなじみます。
混ぜた直後に植え付けると、根にダメージを与える可能性があるため注意しましょう。
植え付け時の注意点と株間
土壌の準備が整ったら、いよいよ植え付けです。
ここでの工夫が、その後の成長に影響します。
植え付け時期
ラベンダーの植え付けは、春(4月下旬~5月頃)か秋(9月下旬~10月頃)が適期です。
根が十分に張る前に真夏や真冬を迎えないようにしましょう。
根鉢の扱い
ポットから苗を取り出す際、根鉢を崩しすぎないように注意します。
ただし、根が鉢底でぐるぐる巻いている場合は、軽くほぐして根を広げてあげると、スムーズに土に馴染みます。
植え付け深さ
苗の根元が、地面の高さとほぼ同じか、わずかに高くなるように植え付けます。
深く植えすぎると、茎の根元が湿気で蒸れてしまう原因になります。
株間
地植えの場合、株間を十分に確保することが非常に重要です。
ラベンダーは生長すると大きく広がるため、品種にもよりますが、50cm〜1m程度の間隔を空けるのが理想的です。
株間が狭いと、風通しが悪くなり、蒸れや病気の原因となるだけでなく、株同士が競合して生育が悪くなる可能性があります。
将来的な株の大きさを考慮して、ゆとりを持たせましょう。
地植えラベンダーの日常管理
地植えにしたラベンダーを長く健康に保ち、毎年美しい花を咲かせるためには、適切な日常管理が欠かせません。
特に「水やり」「肥料」「剪定」は、ラベンダーの生育に大きく影響する要素です。
水やり(根付くまでの管理と根付いた後の注意点)
ラベンダーは乾燥を好む植物ですが、植え付け後と根付いた後では水やりの頻度と量が異なります。
根付くまでの管理
植え付け直後から根がしっかり土に張るまでの期間は、水切れさせないことが重要です。
植え付け時にたっぷりと水を与えた後、その後は土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。
特に乾燥しやすい時期や風の強い日は、こまめに土の状態を確認しましょう。
一般的に、植え付けから2週間〜1ヶ月程度で根が張ってきますが、気候によってはもう少し長くかかることもあります。
根付いた後の注意点
地植えのラベンダーが一度根付いてしまえば、基本的に水やりはほとんど必要ありません。
日本の降水量であれば、雨水だけで十分に育ちます。
むしろ、水のやりすぎは根腐れの大きな原因となります。
土壌の水はけが非常に良い場所や、晴天が長く続いて土がからからに乾いているような猛暑の時期に限って、朝早くか夕方に少量与える程度で十分です。
地中の深くまで根を伸ばすため、頻繁な水やりは不要と心得ましょう。
肥料の与え方と時期
ラベンダーは痩せ地でも育つ植物であり、基本的に多肥を好みません。
肥料の与えすぎは、かえって株を弱らせる原因となることがあります。
基本的な考え方
地植えのラベンダーは、植え付け時に土壌改良を行っていれば、基本的に追肥はほとんど不要です。
肥料を与えすぎると、葉ばかり茂って花付きが悪くなったり、株が徒長して病害虫に弱くなったりすることがあります。
肥料を与える場合
もし生育が思わしくない場合や、花付きを良くしたい場合は、ごく少量の肥料を与えます。
時期
春の芽出し前(2月下旬〜3月頃)か、開花後(6月〜7月頃)に与えるのが一般的です。
種類
緩効性の化成肥料を少量、または、油かすなどの有機質肥料を株元から少し離れた場所に施します。
液体肥料を与える場合は、規定より薄めに希釈して与えましょう。
剪定の基本(開花後剪定・強剪定)
ラベンダーは剪定を行うことで、株の形を整え、風通しを良くし、次の花の開花を促し、株の寿命を延ばすことができます。
主に「開花後剪定」と「強剪定」の二つがあります。
開花後剪定(花刈り)
時期は、花が咲き終わった直後、梅雨に入る前(6月〜7月頃)に行います。
剪定方法は、花がらが全て終わり、その下の葉が数枚ついている部分で切り戻します。
茎の途中に新芽が確認できる場合は、その新芽の少し上で切ると、そこから次の芽が伸びてくるのを促します。
これにより、株の蒸れを防ぎ、二番花を咲かせたり、次のシーズンに向けて株を充実させたりする効果があります。
強剪定(整枝剪定)
時期は、主に春の芽吹き前(3月頃)か、秋(9月下旬〜10月頃)に行います。特に株が大きく木質化し、下葉が枯れ上がってしまった場合や、株の形を整えたい場合に行います。
剪定方法は、木質化した部分の少し上にある、緑色の葉がついた部分や、新しい芽が出ている部分の上で切り戻します。
大胆に切り戻すことで、株をリフレッシュさせ、下部からの新しい芽吹きを促し、株の寿命を延ばすことができます。
ただし、木質化した部分から全く芽が出ていない部分で切ってしまうと、枯れてしまう可能性があるので注意が必要です。
ラベンダーの地植えで挿し木以外の増やし方
ラベンダーの挿し木以外での増やし方は
・株分けで増やす方法
・種まきで増やす方法
上の2つの方法があります。
以下で詳しくご説明いたします。
株分けで増やす方法
ラベンダーを増やす方法として挿し木が最も一般的ですが、一部の品種では「株分け」も有効な手段となります。
株分けは、大きく育った株を複数に分割して増やす方法で、挿し木とは異なる特性を持っています。
株分けに適したラベンダーの品種と時期
株分けはすべてのラベンダーに適しているわけではありません。
品種の特性と、植物への負担を考慮した適切な時期を選ぶことが重要です。
株分けに適した品種
株分けに向いているのは、主に株元から複数の茎が密生して株立ちになるタイプのラベンダーです。
代表的なのは、イングリッシュラベンダーの中でも特に枝分かれが良く、こんもりと茂る品種や、デンタータラベンダー、ラバンディン系ラベンダーの一部などが挙げられます。
これらの品種は、成長すると株の根元が複数に分かれやすいため、株分けしやすい傾向にあります。
逆に、茎が一本立ちで木質化が進みやすいフレンチラベンダーなど、株元がまとまりにくい品種や、ひょろひょろと伸びるタイプには株分けはあまり適していません。
株分けに適した時期
株分けは植物に大きなストレスを与える作業であるため、株が最も元気な時期を選ぶことが大切です。
- 春(3月下旬〜4月頃): 新しい芽が動き出す前が理想的です。
株が休眠期を終え、これから成長を始めるエネルギーを蓄えているため、分割後の回復が早まります。
- 秋(9月下旬〜10月頃): 夏の暑さが和らぎ、冬の休眠期に入る前も適期です。
冬までに新しい根を張る時間があり、春からの成長に備えられます。
- いずれの時期も、猛暑や厳冬期、開花期は避けましょう。
株分けの手順と注意点
株分けは、根を傷つけないよう慎重に行う必要があります。
1. 手順
- 準備: 株分けに適した時期に、移植ゴテやシャベル、剪定バサミ、新しい用土、植え付け先の鉢や場所を用意します。
- 掘り起こし: 株の周囲を大きく掘り、根を傷つけないように慎重に株全体を掘り起こします。
根を傷つけないよう、土をつけたまま持ち上げるのが理想です。
- 土を落とす: 掘り起こした株の根元についた土を、手で優しくほぐしながら落とします。
この時、根の状態を確認し、腐った根や傷んだ根があれば取り除きます。
- 株の分割: 根と茎が自然に分かれている部分を探し、手で優しく引き裂くように分割します。
もし分かれにくい場合は、清潔なナイフや剪定バサミを使って、根を傷つけないように慎重に切り分けます。
最低でも2〜3本以上の茎と、十分な根がついている状態に分割しましょう。
- 植え付け: 分割した株は、すぐに新しい鉢や地植えの場所に植え付けます。
新しい用土は、水はけの良いものを選び、植え付け後にはたっぷりと水を与えます。
- 管理: 株分け直後は、株がストレスを受けています。直射日光を避け、半日陰で管理し、土の乾燥に注意しながら、根付くまで丁寧に水やりを続けます。
注意点
- 株への負担: 株分けは株に大きな負担をかけるため、あまり頻繁に行わないようにしましょう。株が十分に大きく、健康な状態の時に行うのが鉄則です。
- 根を傷つけない: 最も重要なのは、根をできるだけ傷つけないことです。
無理に引きちぎったり、根を乾かしたりしないよう、素早く作業を行いましょう。
- 病害虫の確認: 株分けの際に、病気や害虫の有無を確認し、問題があればその部分を取り除いたり、適切な処置を施したりしてから植え付けましょう。
- 活着までのケア: 分割した直後の株は非常にデリケートです。
根が十分に張るまでは、水やりや置き場所に細心の注意を払い、優しく管理してください。
種まきで増やす方法
ラベンダーを増やす方法として、種から育てる「種まき」も選択肢の一つです。
親株とは異なる個体が得られる可能性があるという魅力がある一方で、手間と時間がかかり、成功させるにはいくつかのポイントを押さえる必要があります。
種まきの時期と品種選び
種まきでラベンダーを増やすには、適切な時期と品種の選定が重要です。
種まきの時期
ラベンダーの種まきは、一般的に春(3月〜4月頃)か秋(9月〜10月頃)に行います。
春まきは、その後の生育期間が長く取れるため、比較的育てやすいとされています。
秋まきは、冬の低温期間を利用して発芽を促す「低温要求性」を持つ品種の場合に適していますが、冬の寒さ対策が必須となります。
いずれの時期も、発芽適温(品種によるが15〜20℃程度)を確保できる時期を選ぶことが大切です。
品種選び
種まきで増やす場合、特に注意したいのが品種選びです。
- 種の入手: 市販されているラベンダーの種は、主に「イングリッシュラベンダー」や「ラバンディン系ラベンダー」の一部が中心です。
フレンチラベンダーなどは種子が少なく、市販されていないことが多いです。
- 品種の特性: ハイブリッド品種や園芸品種の場合、種をまいても親株と全く同じ形質(花の色や香り、草姿など)を受け継がない「先祖返り」を起こす可能性があります。
これは、遺伝子の多様性によるもので、予期せぬ花が咲くことも種まきの楽しみの一つではありますが、特定の品種を増やしたい場合には向いていません。
確実に同じ品種を増やしたいのであれば、挿し木が適しています。
種まきの方法と管理の難しさ
ラベンダーの種まきは、他の一般的な草花に比べて、いくつか難しい点があります。
種まきの方法
- 用土: 清潔で水はけの良い「種まき用土」を使用します。
市販の種まき用土が最も適しています。
- 準備: 育苗箱や育苗ポットに用土を入れ、湿らせておきます。
- まき方: ラベンダーの種は非常に小さいため、「ばらまき」にするか、間隔を空けて「すじまき」にします。
種をまいたら、ごく薄く土をかぶせるか、覆土せずに軽く押さえる程度にします。
光を好む「好光性種子」の場合があるため、あまり厚く土をかけないのがポイントです。
- 発芽促進処理(必要な場合): ラベンダーの種には、「休眠打破」のために低温にさらす必要があるもの(層積処理、冷蔵庫で湿らせた状態で一定期間保存するなど)があります。
購入した種の袋に記載されている指示に従いましょう。
管理の難しさ
- 発芽率の低さ: ラベンダーの種は、一般的に発芽率があまり高くありません。
たくさんの種をまいても、すべてが芽を出すわけではないことを理解しておく必要があります。
- 生育の遅さ: 発芽したばかりのラベンダーの苗は非常に繊細で、成長が遅いです。
他の植物に比べて、開花するまでに1年以上かかることも珍しくありません。
地植えにするまでには、さらに育苗ポットで大きく育てる期間が必要です。
- 環境管理: 幼苗期は、温度、湿度、日当たり、水やりの全てに細心の注意を払う必要があります。
特に、水のやりすぎによる根腐れや、乾燥による枯死、病害虫の被害に遭いやすい時期です。常に土の表面の状態を確認し、適度な湿り気を保ちつつ、風通しと日当たりを確保することが求められます。
- 品種のバラつき: 前述の通り、種まきの場合、親株と同じ性質を受け継がない可能性があります。
特に特定の香りや花の色を期待している場合は、期待通りの株が育たないことも覚悟しておく必要があります。
ラベンダーの地植えや挿し木の注意点
ラベンダーの地植えや挿し木について説明してきましたが、それぞれ特有の注意点があります。
失敗を避けるためには、枯れてしまう原因や育たない理由を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
挿し木が枯れてしまう主な原因
せっかく挿し木をしても、途中で枯れてしまうことがあります。
その主な原因は以下の点に集約されます。
- 水分の管理ミス(乾燥・過湿): 最も多い失敗原因の一つです。
挿し穂はまだ根がないため、乾燥には非常に弱いです。水切れを起こすとあっという間にしおれて枯れてしまいます。
しかし、逆に水をやりすぎたり、土が常に湿っていたりすると、根が出る前に切り口が腐ってしまいます。
特に、清潔ではない土を使っていると、腐敗菌が繁殖しやすくなります。土の表面が乾いたら水を与える、という基本を守り、高湿度を保ちつつも換気を行うバランスが重要です。
- 挿し穂の質の悪さ: 病気にかかっている、元気がない、細すぎる、古すぎる(木質化しすぎている)といった挿し穂は、発根する力が弱く枯れやすいです。
また、花芽や蕾がついている挿し穂は、そちらに養分が取られてしまい、発根に集中できないため避けるべきです。
充実した健康な枝を選ぶことが成功への第一歩です。
- 不適切な時期の挿し木: ラベンダーの挿し木には適期があります(一般的に春か秋)。
猛暑の時期や真冬に挿し木を行うと、暑すぎたり寒すぎたりして、挿し穂に大きなストレスがかかり、発根が困難になります。
気温が安定し、ラベンダーの生育が活発な時期を選びましょう。
- 日当たりと置き場所の不適: 直射日光が当たりすぎる場所は、挿し穂を乾燥させ、葉を傷めてしまいます。
かといって、全く日が当たらない場所では光合成ができず、株が弱ってしまいます。
発根までは、明るい日陰や半日陰で管理し、風通しの良い場所を選ぶことが大切です。
- 使用する用土の不適切さ: 肥料分を含んだ通常の培養土を使用すると、根を傷めたり、カビや腐敗の原因になったりします。
挿し木には、清潔で無菌、かつ水はけと通気性に優れた挿し木専用土(赤玉土単用、鹿沼土単用など)を使用することが必須です。
地植えでうまく育たない時のチェックポイント
地植えにしたラベンダーが期待通りに育たない場合、環境や管理に問題がある可能性があります。
以下の点をチェックしてみましょう。
- 日当たり: 最も基本的な点ですが、日照不足はラベンダーの生育不良の大きな原因です。
一日中日陰になる場所や、周囲の建物や木で日が遮られていないか確認しましょう。
特に生育期には十分な日照が必要です。
- 水はけ: ラベンダーは過湿を非常に嫌います。
植え付けた場所の土が粘土質で水はけが悪いと、根腐れを起こしやすくなります。
雨上がりに水たまりができやすい場所ではないか、土を掘ってみて水はけの具合を確かめてみましょう。
土壌改良が不十分だった可能性があります。
- 風通し: 株元や株全体に風が通らず、湿気がこもっていませんか?
特に梅雨時期や夏場は、風通しが悪いと蒸れてしまい、灰色カビ病などの病気が発生しやすくなります。
株間が狭すぎないか、周囲の植物が密になっていないかを確認し、必要であれば剪定や移植を検討しましょう。
- 土壌のpH(酸度): ラベンダーは弱アルカリ性〜中性の土壌を好みます。
日本の土壌は酸性に傾いていることが多いため、植え付け前に石灰などでpH調整をしなかった場合、生育不良の原因となることがあります。
土壌酸度計で現在のpHを測り、必要であれば調整を検討しましょう。
- 肥料の与えすぎ: ラベンダーは多肥を嫌います。
特に窒素分の多い肥料を与えすぎると、葉ばかり茂って花付きが悪くなったり、株が徒長して病害虫に弱くなったりします。
もし思い当たる節があれば、しばらく肥料を控え、株の様子を見守りましょう。
- 品種の選択ミス: お住まいの地域の気候に合わない品種を選んでいませんか?
例えば、高温多湿に弱いイングリッシュラベンダーを、夏の暑さが厳しい地域で地植えにすると、枯れてしまうリスクが高まります。
地域の気候に適した品種を選ぶことも重要です。
まとめ
ラベンダーが地植えで増える?初心者でも失敗しない増やし方徹底解説いたしました。
ラベンダーを増やして行く方法はいろいろとあります。
ここで紹介した挿し木が一般的な方法で、初心者の方でも比較的に増やしやすい方法になります。
挿し木で増やせるようになれば、他の方法の株分けや種まきにもで是非挑戦して頂きたいと思います。
今回ご紹介させて頂いた情報が、何かのお役に立てれば幸いです。
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